卒業式や終業式のシーズンですね。
野外塾に参加してくれたお子さんたちもひとつ進級したり進学したり、それぞれステップアップする季節。
かげながら、ご成長をこころからお祝いしております。
昨日、「鉄塔武蔵野線」(銀林みのる・1994初版)という小説を読み終えました。
この小説と、以前から繰り返し読んだ「多摩川探検隊」(辻まこと・1971「山の声」に収録)という短編に登場する主人公らの動機は、時代は異なってもよく似ています。
家の前にそびえる鉄塔。その鉄塔を追っていきつくところを確認してみたい。
地元を流れる多摩川。はじめの一滴はどのようになっているか確認する必要に迫られた。
奇しくも、ともに2人連れでの冒険行で、ともにリーダーは小学5年生。
鉄塔をどこまでも追い求める主人公らは、ひとりは日没後に帰路につき、ひとりは鉄塔下で野宿、翌日は親の捜索願によって志なかばにして家へ連れ戻されました。
いっぽう、多摩川の最初の一滴を求めて歩いたふたりは2泊3日にわたって沢筋や山道も歩き、八王子から電車で帰りました。
そしてそれぞれの主人公が、その後、相棒の親御さんと気まずくならざるを得ませんでした。そりゃそうでしょうね。
親に無断で、あるいは親にウソついて、日をまたいで遂行される冒険譚は、これらの小説のなかでも巡査や発電所所長から主人公が賞賛される場面があるように、当事者外の者には武勇伝となるようです。
しかし、現実には、子を持つ親は寝るに寝られぬ夜を過ごすことでしょう。
子どもが想像する以上に、子を心配する親の感情は強いあまり(そして不要な心配を強いられるあまり)、子どもの安心が確認できると親は猛烈な怒りを感じることもありがち。
自分にしても、日暮れまで遊んでいたところへ親が探しにきて、人々が行き交う交差点の脇でいきなりビンタを張られ、あっけにとられたことを今でも鮮明に覚えています。
やっぱり、無断外泊はよくない。
自分の頭のなかだけの計画やなりゆきまかせも。
ざっくり計画を立てて、ダメモトで親に話してみる。
反対されても探究心が駆り立てるようならば、メモを残して出る。
まったくなにも情報がなくて子どもが帰ってこないことに較べて、行動のメドが立つだけでも親御さんの心のもちようが違うというものです。
死んだり、後悔するような失敗はしないで帰ってこられるよう細心の注意を払ってくださいね。
冒険行をそそのかすわけではありませんが、ステップアップの季節は自分なりの好奇心で、人から見たらどんなに小さい一歩でも、みなさんにとって大切な一歩を踏み出すのにはよいタイミング。チャレンジは尊いことです。応援しています。