典型的なブタ鼻。当時は実際に使用される前提だったのでこのように肉厚でした。 |
おもしろいのは、もともと「ブタ鼻」がなんの役にたっていたのかはわからないけれど、なんとなく「アウトドアっぽい」ということでウケているというムードがあることです。
たしかに、いまのパック類、そしてアウトドア用品全般で、レザーをパーツとして使っているものはほんとに少ないかも。
もともとこのレザーパッチは、1970年代から80年代にかけて製造されたアメリカ製パックの機能拡張として役立っていました。たとえばピッケルを固定するのに使ったり、当時エンソライトマットといわれていた断熱マットを丸めてパックの底や脇に固定するための支点となったわけです。
ヨーロッパ製のパック類にもレザーパッチはありましたが、ブタ鼻のようにメーカーの枠を超えて定型化されたパッチ類はなかったように思います。
パックのこうした機能拡張のため、現在はデイジーチェーンと呼ばれるナイロンウェビングが「ブタ鼻」に代わっていますが、これもまた使いきっている人はほとんどいませんよね。
せいぜいシェラカップをひっかけたり、クマよけ鈴をくっつけていたり。
ブタ鼻の復活と連動している動きだな、と思えるのが、いわゆる「旧タグ」の復活。
旧タグというのは、アウトドア用品メーカーがその昔に使っていたブランドタグのこと。
アメリカのアウトドア用品メーカーは、80年代以降にM&A(合併や買収)の嵐が吹き荒れました。その結果、創業者が作った個性豊かなタグも、合併や買収されたあとにおおきく変わってしまい、なんだか失敗作のようになってしまうことが多かったのです。タグって、製品のブランディングにとってはとてもたいせつな要素ですよね。
若いひとたちの間で、もし70年代や80年代へのなつかしみや憧れがあるとしたら、それは興味深いです。
なぜならば、その時代にアウトドア用品はおおきな機能的な躍進を遂げながらも、製品から感じられる「人間らしさ」に若いひとたちが微妙に魅せられているような気がするからです。
縫製は溶着に変わり、真鍮製のジッパーは防水ジッパーに変わり、とハイテク化するパック類。
それらにもオーラがありますが、どこかほっとできる独特のオーラを発しているのが当時のパック。
とはいっても、やっぱりオーラを発しているのはごく一部の製品ですが。
お好きなひとは、オークションなどをのぞいてみると、当時のパック類が出品されていることがあります。
細部がわからないのが難点ですが70's〜80'sアウトドア用品の特長を知ることができると思います。