「閉山後の富士山登山」全員登頂・無事故で終了。

6合目で迎えた黎明。
まさに最高の気象条件。
この機会を逃す手はない。 
高山の空気感にみちあふれ、心のなかの喜びもみちあふれる。
8合目の鳥居は神聖な趣をたたえ、まるで雲上の別世界を護るよう。
そして俗人はなにかの儀式のように銭を埋め込む。
これもまた祈りのひとつの形。
九合以上の最後の登りは高度感があり、最後のがんばりどころ。
写真に私たちのパーティーしか写っていないように、空いてました。
剣が峰の3776mの三角点より少し高いリムエッジ。
事実上、日本一高い場所でしょう。
人物のとなりの塔は電子基準点。白いドームの標高は3777.5m!
火山岩だらけの荒れた山肌にも秋色をみせる富士山。
ほんとうにありがとうございました。
「閉山後の富士山」。
おととしは台風の接近で前日に活動を中止。
昨年は出発したものの、降り止まぬ本降りの雨のなか、富士宮口新五合目の駐車場でフル装備で車中待機していたけれどタイムアップで無念の下山。

そして、今年は3年越しに久しぶりに参加者8名様(うち小3男子と高1男子各1名)、スタッフ4名あわせて12名が富士山頂に立つことができました。
先週はじめの天気予報では台風の接近を報じていて落胆していましたが、台風は予想進路から大きく南側に逸れました。
土曜日の出発時は雨が降っていましたが、登山当日は富士宮口新五合目に着いた時点で微風、満天の星空という絶好の登山日和。
正直、ほんとにうれしかったですね。

4時50分スタート、スローペースですが確実に高度をかせいで7時間かけて12時前に山頂到着。剣が峰の往復をしてすぐさま下山開始、新五合目に16時48分到着。
休憩を含めてですが12時間の登山をしたこの日は、おそらく8名の参加者の方々の多くにとって「ロンゲスト・デイ」になったことでしょう。

天気は終日頭上に雲ひとつない好天。しかも頂上まで終始ここちよい微風が吹いて汗さえかかず、「こんな恵まれた日が富士山にはあるんだ」と思うくらいの最高の日でした。

しかし、子どもたちふたりはともに頭痛や吐き気を感じての山頂往復でした。
とくに小3の男の子は下山直後から珠のような涙をポロポロ流して、頭痛を訴えましたが、標高を下げるのがいちばん。初心者スキーのレッスンのようにストックの両端をそれぞれ両手で握りあって、後ろを私、前を彼が歩きました。
この方法だと、ガラガラの危なっかしい急降下でもストックが彼にとってつねに手すりの役目をするので、ストックをきちんと握ってくれさえしていれば危険な転倒を防ぐことをできるのです。
「電車ごっこ」と称してこの方法で下山したところ、彼のモチベーションも上がって、標高差1300mを4時間で下ることができました。

すべてのご参加者のがんばりと、古くからの山仲間によるボランタリーで安心できるサポート、そして天の恵みともいえるようなすばらしい好天によって、無事故で秋本番の時期の富士山登山を終了できて、ここちよい達成感を得られました。

富士山登山をなぜ公募でこの時期にやったのか。
それは私たちなりのオンシーズン時の富士山登山へのアンチテーゼでした。
「お金があれば登山中になにかあってもなんとかなる」と、登山者がこころのどこかで思えるように仕掛けられたオンシーズンの富士山登山。
それは登山者だけが悪いのではありません。

それに対して、あらかじめオフシーズンの富士山登山についてのガイドラインを承諾していただき、そして個人個人で予想されるリスクについて考えて準備を整え、そのうえで富士山登山当日に臨む。
そうした「本来の登山には当たり前」のこころがけをしっかりしていただいたうえで、イモ洗いのような状況を避けてひとが少ない富士山の登山という恩恵に与(あずか)る。
こうした体験こそが、山歩きをいっそう安全にするきっかけになるのではないでしょうか。

じっさい、昨日は私たちの前後に人影がまったくなくて「まるで富士山貸切?」と思えるような至福のひとときがありました。
そんななかで、参加者一人ひとりにトップで歩いていただき、ふつうではなかなか体験できないひとときを体験していただくように計らいました。

今回の経験が参加者のみなさんにとって、次の山に向かうときの心構えや、計画のヒントになれば本望です。