かつてご参加者・今はサポーターとしてご支援いただいているお母様から
「サポーターとして下見に同行するようになって、野外塾の下見への考え方が理解できました。参加者としてはわかりにくい下見についてお伝えすると役立つのではないでしょうか」とご助言いただけました。
そこで、私たちが下見時に考えていることをお伝えいたします。
たとえ「いつもの沢」でも下見は重要。
はじめて訪ねる新しい活動候補地はもちろんのこと、よく訪ねる場所でも時間の経過とともに自然のようすは変わり、事故につながる因子が潜む恐れがあると考えるべきです。
命を預かる活動に先立って行う下見は、主催者が活動当日に参加者と共有できる情報を得るための絶好のチャンス。
そんな下見に際して私たちが重視しているのは参加者のチャレンジと学びの機会を下支えするのが下見だいう考え方です。
たとえば沢なら、前年に楽しく遊んだ沢でも、新しいシーズンの梅雨明けに下見を実施します。
もし… 子どもたちが泳ぎたくなる「いつもの美しい淵」の底に、梅雨の間に上流から子どもの足がひっかかるような木が流れ着いているのに、前年の体験をもとに「あそこは安全だ」と盲信して活動を実施したら…
考えたくもないですね。
では、そんな木が沈んでいたらその淵ではもう泳げないのか。
木がもし淵の左側に沈んでいて、右側に回避できるなら「木を避けること自体を楽しみながら遊ぶ」ことができるかもしれないし、状態が険悪で遊べないとしても、その情報を参加者と共有すれば「そっかー。自然のなかの淵は、プールと違ってあぶないものが沈んでることもあるんだ…」という体験知になります。
この場合、主催者には選択肢があります。
1. 「淵の底に障害物があるのでここはパスします」と泳がせない
2. 左側に注意しながら主催者が泳いで見せて「やりたい子はどーぞ。」と伝える
どちらを選ぶか、は、当日の状況もあるけど、下見をしていれば1も2も選択肢になりえます。
もし下見をしていなかったら、前年に従って1も2もなく「さあ、泳いでみようよ!」とあぶないススメをしかねません。
実際の活動では主催者が思いもよらない子どもたちの遊び方が出現するものです。
子どもたちにとってチャレンジは成長の機会なので、どのようにチャレンジ心を喚起できるのか、下見時の情報をもとに主催者の判断を問われるところですね。
下見の有無、下見の内容は、自然体験活動実施団体の理念を反映します。
私たちは、はじめての方もご参加される活動では、下見時に得られた情報こそが参加者のチャレンジと学びの機会をもたらすし、力量がわかっている経験者向きの活動では、あえて下見をしないで現地で主催者と参加者相互の判断による行動がチャレンジと学びの質を高める機会になりうる、と考えて活動を計画・実施しています。