従来は共有に意味がないと思っていた運営の雑事情を「野外塾+(プラス)」と題して事実ベースでつづります。
4回目は、地球野外塾の運営上の特徴を記します。
短くわかりやすくしたいので、私(海老澤)の言葉で記します。
私たちのNPOは事業収入型NPOといわれるグループに入ります。
事業を実施して、その対価をいただいて運営に充てるNPOのことを指します。
私たちの事業は現在、自然体験活動事業と、未就学児の運動支援事業の2つです。
上記の2つの事業での収入が全収入の約9割を占め、ご寄付と合わせてほぼ100%になります。
昨年はコロナで自然体験活動事業の実施を自粛したので、収入の内訳は持続化給付金が65%、事業収入が25%、ご寄付が8%、その他が約2%と、例年と大きく違う構成比でした。
事業収入型のNPOは、事業内容は一見すると営利企業と変わりません。
しかし、営利企業と違って社会課題を解決するのが最優先され、同時にご一緒いただく方々のご実情を、営利企業に比べてより配慮していることがその違いのひとつだと自負しています。
具体的には、
1. たとえばお金に関して…
1-1
自然体験活動では子どもたちを対象としているため、直前の病気やケガによるキャンセルは親御さんさえ避けようがない事態。そのため、病気やケガがキャンセル理由ならその方(お子さんであれ、親御さんであれ)のキャンセル料は当日でも無料にしています。
営利企業だと、病気やケガも自己都合としておそらくなんらかのキャンセル料の対象になるでしょう。
1-2
児童扶養手当受給のご家族には参加費優遇を設定して収入差による「体験格差」の予防を心がけています。体験もまた学びと同様に子どもたちの成長に欠かせないからです。
1-3
リピートしてくださる方々に対しては初回の活動で相互に信用を築けたと判断し、日帰り活動ならお支払いは当日です。お振込のお手数をおかけしないようにしております。
いっぽう、初回には原則的にお振込をお願いしています。
2. 活動方針として…
2-1
悪天(本降り以上の降雨や強風など)が見込まれる活動は原則的に中止します。
自然体験は、悪天でも実施することに一定の意義があるのは確かです。しかし、自然体験が少ないからこそご参加いただけるご家族にとって、悪天の洗礼は「自然を嫌いになってしまう」逆効果のほうが大きいうえ、悪天時は主催者が下見では想像できなかった脅威(たとえば崩落、落石、落枝、落雷、増水、激しい疲労、体温低下など)にさらされる恐れもあります。
営利型の募集ツアーでは悪天時でも平気で実施するうえ、悪天見込を理由にしたキャンセルも自己都合としてキャンセル料の対象になります。
2-2
リピートしていただく方々には前回のようすを鑑みて新しいチャレンジの提案や、苦手部分のサポートをできるよう、顧客情報を活かして一人ひとりに合ったアドバイスができるように心がけています。
初回の方々に対しては、諸事情でそれっきりになったとしても活動の中から応用可能な体験をひとつでも「おみやげとしてお持ち帰りいただける」ように一期一会の気持ちで臨んでおります。
どのご参加者にとっても、いつまでも私たちの活動に塩漬けにならないよう、どんどん体験と知識を積んでいただいて「野外塾卒業」を促す内容であるよう心がけています。
運営の長短と特徴の自覚
事業収入型NPOの長所は、補助金や助成金のように出資元の条件がないので、理念に沿って迅速で小回りがきく企画ができます。
いっぽう、短所として、企画が外れたときはその企画に期待してくださった方にとって期待はずれになってしまう結果を招くうえ、収益的にも経験値的にも相応の成果を得られず団体が疲弊するジャブパンチになります。
現状では、こうした失敗でPDCAを回したくても客観指標が乏しく、同じような失敗を繰り返す悪循環にもなりかねません。
巨視的には、NPOは公のものであるという大自覚をいつも持っている必要があります。
私がなにか記す時に「私たちは…」と書くのもそのためです。
日常で海老澤はワンオペだし、海老澤の考えを書いているようにみえても、運営をバックアップしてくださる理事や正社員といったNPO法人の意思を形作る構成員の方々、私たちをサポートしてくださるボランティアさんたちと目線を同じくするという意味においても、少なくとも団体としての発信では、前述したようなみなさまとともに「私たち」の考えを代表する気持ちでおります。
また公のものであるということは、みなさんからのフィードバックや参画を積極的に取り入れて、運営側が感じている社会課題と、そのライン上にある本当のニーズをすり合わせて課題解決の実効性が高い運営をすることが求められます。
NPOの顧客は、営利企業とそれとは違って、ご希望すれば運営にも関与できるのです。
私たちのNPOの将来像は…
自分の安全を自分で守りながら自然に学び、その実体験を生活と社会のために役立てられる人が多くなって、私たちの存在価値がなくなって解散するのが一番理想です。
いっぽう、そうなるためには相応の時間が必要なので、野外塾が存続し続けて課題解決を追求し続けることが大切です。
そのためには運営基盤を強化して、野外塾の運営を次世代に継承するのが喫緊の課題です。
現在、地球野外塾に月ごと人件費が発生する有給スタッフはひとりもおらず、海老澤は季節労働者に近い有償ボランティアです。
今回のコロナ禍で、奇しくもこうした労働が日本ではきわめて弱い立場であることが露呈したので、今後は有給スタッフを作れるよう、さらに運営を工夫します。
安定した運営を目指すためには、まず共感を得られる運営が第一です。
みなさまからのご意見、ご助言やお知恵がよりよい運営のもとです。
たいへんな時期ですが、引き続き、ご一緒によろしくお願い申し上げます。
最後まで読んでいただき、こころからお礼申し上げます。